《India / Bhara》

マクドナルドの前を歩く野良牛(オス)
撮影場所:デリー、Vasant Lok Vasant Vihar にある店(New Delhi)

マクドナルドの前を歩く放浪“牛”
(第一号店:Vasant Lok Vasant Vihar、New Delhi)

食われる心配のない牛様、心なしか態度がデカイ
軒先のベンチに座るドナルド君も吃驚!



インドのマクドナルド《世界で唯一、牛肉を使わないマクドナルド》

1996年当時、世界95カ国に約2万の店舗を有するマクドナルド社は、1996年秋、インドに進出させた。1991年頃からインドへの進出計画が具体化されていたそうだ。2002年3月4日付けの日本経済新聞朝刊によると、インドにおけるマクドナルドは、現在34店舗あり、今後2年間で店舗数を80にする方針、とのこと。

だが、インドは国民の8割前後がヒンドゥ教徒。ヒンドゥ教徒にとって牛は「神聖なる牛さま」である。やはりインドのマクドナルドには「100%牛肉バーガー」は存在しなかった!

また 約1億人といわれるイスラム教徒にも配慮して豚肉も排除。

よってインドは、世界初の牛肉を使わない店になとなった。ゆえにインドのマクドナルドには、“インド限定特別メニュー”がある。ハンバーガーの具は、ラム(羊肉)、鶏肉、白身魚、野菜コロッケ、の4種類を設定している。


インドでは、外資系外食産業の参入は難しいようだ。

インドに進出している世界展開をしているファーストフードチェーン(外資系外食産業)では、マクドナルドの他に、KFC・Wimpy・ドミノピザ・ピザハット、などがある。

インドではヒンドゥ教徒が82.7%を占める(公称)。1990年初、ラオ政権は経済開放政策を推し進めた。結果、インド国内には欧米文化(外国製品など)が大量に入ってきたが、これは購買力のある富裕層のためのものであって、国民の大部分を占める貧困層には恩恵が回ってこなかった。

ヒンドゥ教系の諸団体は、インド古来の生活様式への回帰などを謳いあげ、貧困層には、独自の福祉団体を通じて利益を与え、彼らの支持を集めて勢力が拡大していく(ヒンドゥ民族主義的な思想は、ムスリムとの新たな対立を呼んだ)。

ヒンドゥ教の諸団体の中でも、世界ヒンドゥ教会 Vishva Hindu Parishad VHP、などは、インド国内、海外のインド系移民社会(特に米英)にも食い込んでおり、集金能力もある。彼らは、欧米文化に嫌悪感を持ち、インド政府が現在も継続している(西欧型)経済解放政策にも反対している。インドに進出してきた外資系会社のビジネス手法は、インドの伝統文化を破壊し、インドにそぐわないと、批判している。

現在のインドでは、ヒンドゥ教系諸団体から派生した右派政党、保守層の影響力が非常に強い。1998年10月より与党第一党に復帰したインド人民党 Bharatiya Janata Party BJPの母胎は、世界ヒンドゥ教会VHPであり、党首バジパイは現在は首相である(ただし単独政権ではなく連立政権NDAなので、あからさまなヒンドゥ民族主義政策はとれない)。

彼らは、インドに参入してきた外資の食品関連会社へ、批判の矛先を向けている。特に、コラコーラやペプシコーラの不買運動は盛んである。こんな中、KFC(ケンタッキー・フライドチキン、米国)がインドに1号店を出した。KFCは、従来の手法でインドに出店した。

1995年6月、KFC の開店(バンガロール)では、ヒンドゥ保守層などの大反対運動がおきた

KFC営業反対運動は、行政当局も動かした。開店翌日のKFCでは(難癖をつけられ)一時営業停止にも追い込んだりもした。

ヒンドゥ教系の女性団体(VHPの女性部門など)は、「ヒンドゥ教徒にとっては食事は、人間を通じて神に捧げる宗教儀式の一つである。ファースト・フードは近年インドに入ってきたものであり、ファーストフードに含まれる“統一規格食材、有害添加物”は、人体に悪影響を及ぼす。ファーストフードはインドの伝統文化を破壊するものである」と訴えている。

後発のマクドナルド社は、政治団体などにコネをつけ、実に念入りに市場調査を行い、万全の体制でインド市場に参入した。インドのマクドナルドのメニューは、他国のマクドナルドとかなり異なる(別物ともいう)。ヒンドゥ民族主義者を納得させる、インドならではのメニューを考案。なるべく刺激させないように、最新の努力を払った。

これが奏してマクドナルドの店舗は順調に増えている。デリーでは、Vasant Lok Vasant Vihar、Green Park Market、Connaught Placeなど(1999年現在)。ボンベイ(ムンバイ)などにも店舗がある。

そのため、インドではこれら世界的なファースト・フード(ジャンクフード)の店は、極めて少ない。

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「フライドポテト」で用いる油に、“牛脂”が混入? 騒動

2001年春、在米ヒンドゥ教徒と菜食主義者の3名が、「マクドナルドは1990年代以降、《フライドポテトの調理には植物油しか使っていない》と宣伝しているが、フライドポテトで用いる揚げ油に《牛脂》=骨油が混入しているのではないか?」としてアメリカのワシントン州の裁判所に「損害賠償金(慰謝料)の支払い」訴訟を起こした。

これに反応して、インドのマクドナルド現地法人は、「インドでは、調理で使う油は《100%植物油》、牛脂(骨油)の混入はありえない」はコメントしている。だが、インドでは、マクドナルドに対する抗議行動が広がった。

2002年5月、アメリカのマクドナルドでは、自社HPにて「
アメリカ国内の店舗では、ポテトの加工の際、味付けのために少量の牛脂(骨油)を混入させている。ヒンドゥ教徒や菜食主義者の方々に苦痛を与えたことを心よりおわびする。今後、アメリカのマクドナルドで使われている、食材などの情報をHPで開示する」と発表、謝罪

2002年6月、米マクドナルド社は、原告に1,000万ドル(約12億円)を支払うことで和解した。










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