《Islamic Republic of Iran》

アーシュラーは、シーア派独自のもの。毎年、イスラーム暦(ヒジュラ暦)モハッラム月の1日〜10日に行われる。《哀悼祭》という性質をもつ。

タイトル:アーシューラー
撮影場所:イスファハン

《ザンジール・ザニー》と呼ばれる服喪行進

シーア派最大の宗教儀式「アーシュラーの哀悼祭」の儀式のひとつ。《ダンデ》と呼ばれる集団が練り歩く、《ザンジール・ザニー》と呼ばれる服喪行進。鎖の束で、自らの胸や背を打ち付け、声を合わせながら行進する。これは「アーシュラーの悲劇」で惨殺された、シーア派3代目イマームのフサイン一族の痛みを味わう為に行い、シーア派ムスリム男性としての自覚を促す。


アーシューラー:シーア派ムスリム最大の哀悼祭

モハッラム月(ヒジュラ歴第一月)10日、カルバラ(現イラク)で惨殺された第4代カリフのアリー(死後、初代イマームと称される)の第2子(預言者ムハマンドの娘ファティマとの間の子供)であるフサイン Husayn (625〜680、第3代イマーム)とその一族郎党が、カルバラで惨殺=《殉教》された記念日。これを《カルバラの悲劇》とも呼ばれる。

フサイン殉教の前日までの9日間をタースーアー、殉教の当日をアーシューラーと呼ぶ。

元来、預言者ムハマンドが、まだユダヤ教徒と仲良かった頃、ユダヤ教の贖罪の日を模して定めた「断食潔斎の日」だった。現在でも敬虔なスンナ派のムスリムは前後2日間、日の出〜日没まで断食を行う。この断食潔斎の日とフサイン殉教日とが重なったため、シーア派ではアーシューラーといえば《イマーム・フサイン殉教》をさす。

680年、カルバラに住むシーア派ムスリムは、 イマーム・フサインを、カリフにするために担ぎ出し蜂起したが、敵対するスンナ派のウマイヤ朝軍に阻まれ、援軍を出すことが出来なかった。

シーア派ムスリムにとって、《アーシューラー》は、正義が悪に負けた日であり、自分たちが担ぎ出した フサインを犬死にさせてしまった贖罪の日になる。モハッラム月1日〜10日の10日間に渡り、《カルバラの悲劇》を再現した語り物など各種儀式で「心痛」を感じて“号泣”する。痛みを感じたり涙を流すことによって、精神の浄化をはかり、シーア派ムスリムとしての連帯した宗教的な活力を再生する。

10日目、すなわちアーシュラーの当日。伝承では、フサインは正午頃に惨殺されたことになっている。五体満足の男子は、自分が住む一番大きなモスクに正午頃に到着するよう、《ザンジール・ザニー》を行いながら向かう。

ヒジュラ暦モハッラム月1日から翌月のサファル月20日とつづく40日間は、シーア派ムスリムの服喪日であるため「お祝いごと」は行われない。

シーア派ムスリムの《アーシューラー》は、ブワイフ朝(932〜1062、シーア派の王朝)から始まったとされ、18世紀以降、現在のようにシーア派最大の儀式となった、そーだ。

アーシューラーの儀式(1)

モハッラム月(ヒジュラ歴第一月)の1日目から、シーア派信徒の“五体満足の男子のみ”が《ダンデ》と呼ばれる同郷者や同業者、町内会を単位にで、集まる集団を結成。練り歩く

歩きながら、鉄製の鎖で背中や胸を打ち付けながら行進する《ザンジール・ザニー》、または広場などで輪になって、鉄板や素手などで打ち付ける《スィネー・ザニー》を行う。

自分の肉体を傷つけて背任行為を後悔し、惨殺されたアリの痛みを偲ぶ。打ち付けられた部分は赤く晴れ上がり、頭をかち割ったり、トランス状態に陥る者もいる。

アーシューラーの儀式(2)

殉教の様子《ローザトッ・シュハダー》を“物語僧ローゼ・ハーン”が語る。会場は、聖者廟やお金持ち(実力者)の邸宅。邸宅の一角に、アーシュラー用の建物があり、ここで殉教劇を行うこともある。

アーシュラーの1〜8日目は、朝5時から昼まで。9日目〜10日は夜通し行われる(食事は、お金持ちから無償提供される)。男女別々の棟(または階)に分かれ、それぞれ、“物語僧ローゼ・ハーン”が担当する。敬虔なシーア派信徒は、老若男女問わず、本当にすすり泣いている。

フサインの為に涙を流す者は、天国に行ける」と言われている、らしい。

アーシューラーの儀式(3)

殉教の様子を劇で再現した、殉教劇《タアズィーイェ》を見る。集会場や公園の広場、聖者廟などでは、特設劇場(ターキェ、フセイニーニ)をつくり、毎晩、殉教劇《タアズィイェ》を行う。劇ではフサインが惨殺されるシーンを迎えると、男性は泣き叫びながら、自分の体を叩き、女性は床に伏ながら泣き叫ぶ。

《ダズエ》の集団旗《アラム》

ザンジール・ザニーや、スィーネ・ザニーは、シーア派ムスリムの男性にとって、信仰の深さ、シーア派への忠誠心を見せつけながら「男をあげる」という晴れの日になる。沿道に女性がいると、さらに気合いが入る(笑)。

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